オランダでは、個人使用目的の少量の大麻の所持・使用・栽培が認められています。

大麻などのソフトドラッグ使用者が多いオランダでは、ソフトドラッグを完全に追放することは難しいと考えられてきました。

ソフトドラッグまで禁止法で抑えつけてしまうと、ソフトドラッグがハードドラッグと同じ闇市場に出回ることになります。これは、ソフトドラッグ使用者までもがハードドラッグ使用に手を染める機会を増やし、結果的に薬物による害を増やすことになると考えられています。

行政による管理のもとソフトドラッグ販売を許可することで、ソフトドラッグ市場とハードドラッグ市場を完全に分離することに繋がります。ソフトドラッグ市場に限定し、厳しく管理しながらわずかに開放した方が、薬物による害は少なくなるとの考えを持っています。

大麻が合法*な国一覧

※刑法上取り締まられない国や事実上解禁されている国を含みます。

オランダ
ウルグアイ
スペイン
カナダ
アメリカ(一部の州)
オーストラリア(一部の州)
フランス
ドイツ
イギリス
ポルトガル

デンマーク(一部の地域)
アルゼンチン
チリ
チェコ
スイス
ジャマイカ
コロンビア
ジャマイカ
ブラジル

オランダの大麻に対する対応状況

オランダにおいて大麻は今なお規制物質であり、規定上は個人使用のための製造及び所持は軽犯罪です。しかし、後述の「検察庁へのガイドライン」によってソフトドラック使用は処罰されず、個人の少量の使用は合法とされています。

規制状況

嗜好用大麻

個人使用目的の少量の所持・使用・栽培を認める。(1人あたり5苗、もしくは、5グラムまでの大麻)

医療用大麻

医療大麻の研究に熱心であり、患者は医療大麻の処方を受けることが出来る。

外国人に対する規制

外国人客にも大麻を販売している。

解禁された年

1996年:検察庁へのガイドラインが公表され、この中で大麻を含むソフトドラックに対する違反対象や求刑量が定められ、実質的に大麻の一部開放が示されました。

解禁の背景と文化

・ヨーロッパにおける海上貿易の中継地であり薬物の出入が激しかった。
・アメリカやその他西洋諸国に比べ、薬物への危機意識が低かった→アメリカは南北戦争時にモルヒネが使われ、これに伴い多くの薬物中毒者を生み出した。その他西洋諸国でも普仏戦争時に同様のことが起こり薬物への危機感が高まった。オランダはこれに関わらなかった。
・多くの迫害者や移民を受け入れるなど歴史的に寛容な文化である。
・身体に容認できない危険性を生じさせる薬物「ハードドラック」と比較的外の少ない薬物「ソフトドラッグ」が明確に区別されている。

大麻解禁の理由と目的

・ソフトドラッグ使用者がハードドラッグに接する可能性を減らすため。
・ソフトドラッグとハードドラッグの市場を明確に区別するため。
・ソフトドラッグ市場における違法取引や犯罪を減少させる目的。
・時代背景から、早い時期から薬物市場が形成され、薬物に対する論争が起こった。その結果、政府は薬物の全面的な排除は非現実的と判断した。

街の実態

公然と大麻を販売する「COFFEE SHOP」

オランダには、「コーヒーショップ」といわれる公然とソフトドラッグを販売する店が存在します。コーヒーショップでは、法律に基づき、法が許している量を顧客に販売しています。コーヒーショップは法律に従っているため処罰されることはありません。

問題点

コーヒーショップで販売されているソフトドラッグの仕入れ先は非合法に販売していることが多く、それらは処罰の対象です。しながら、現状ではコーヒーショップに大麻がどのように供給されているかを厳密に調査されることは滅多にありません。これはオランダにおける大麻販売の問題の1つとなっています。

政策による効果

・ハードドラッグ中毒者の数は過去数年間で安定しており、使用者の平均年齢は年々上昇している。
・薬物関連の死亡者数はヨーロッパで最も少ない。
・ソフトドラッグの非刑罰化にもかかわらず、オランダにおける大麻の使用比率は他の西欧諸国と比べて高いわけではない。
・オランダにおいてハードドラッグを今までに使用したことがある人の割合は他の西洋諸国に比べて低い傾向がある。

ハードドラッグとソフトドラックの区別

オランダでは、オランダアヘン法に基づき2つのカテゴリを設けており、カテゴリIをハードドラッグ、カテゴリIIをソフトドラッグとしています。

カテゴリI(ハードドラッグ)

ヘロインやコカイン、エクスタシーなど

カテゴリII(ソフトドラッグ)

マリファナ(大麻の葉や花を乾燥させた物)やハシシ(大麻樹脂)などの大麻加工品やマジックマッシュルームなど