CBD(カンナビジオール)は、不眠症や不安、慢性疼痛やその他の多くの健康状態の症状を和らげる可能性があるため、今、世界中で注目されています。CBDの有効性に関する研究はまだ進行中ですが、既に多くの人がCBDを試しており、街中でも購入が可能です。

これまでの調査によると、CBDは一般的に安全とされており、稀に副作用があったとしても非常に軽微なものです。ただし、大きな注意点が1つあります。CBDには、一部の薬と相互作用する可能性があります。この問題は、私達の体内で特定の物質が代謝(分解)される過程に関係しています。

CBDを試す前に、服用しているすべてのビタミン、サプリメント、処方薬、市販薬について医師に相談することが重要です。この相談が重要な理由を、少し詳しく見てみましょう。

薬物代謝に重要なCYP450酵素

あなたが薬や他の物質を服用したとき、体内ではそれを代謝(分解)する必要があります。薬物代謝は主に腸などで行われますが、肝臓も代謝に大きな役割を担っています。

主に肝臓に存在する「シトクロムP450(CYP450)」と呼ばれる酵素があります。これは、薬物代謝において主要な第一相反応の酵素です。

一部の薬物や物質は、このシトクロムP450に影響を与えます。シトクロムP450の働きを促進または抑制することによって、あなたの体が服用した薬物やサプリメントから受ける効果や作用の大きさが変化します。これが、いわゆる薬物の相互作用です。

CBDとCYP450の関係

いくつかの研究によると、CYP450酵素は、CBDを含む数種類のカンナビノイドの代謝を担っています。

CYP450酵素ファミリーの中には複数の酵素が含まれますが、その中でも「CYP3A4」酵素がこれを実行します。そして、CBDがCYP3A4によって代謝される時、CBDはCYP3A4の働きを阻害する作用を働きます。

CYP3A4酵素は一般的に、処方された薬物の約60%を代謝します。しかし、CBDがCYP3A4を阻害している場合、体内の薬を通常通り分解することができません。

また、これと逆のことも起こり得ます。一部の薬はCBDと同じくCYP3A4の働きを阻害します。これらの薬と同時にCBDを服用すると、CBDを分解するために身体が機能しなくなり、作用が大きくなる可能性があります。

薬物代謝が阻害されると…

体内で薬物の代謝が阻害されると、ラベルに表示されている正しい量を服用した場合でも、意図した以上の薬効成分がいつまでも体内に残り続ける場合があります。

必要以上に体内の薬剤の濃度が上がると、望ましくない副作用や、本来は発現し得ない有害な副作用などが起こり、医師が想定していない働きを及ぼす可能性があります。

逆に、一部の物質はCYP450酵素の働きを促進します。この場合、体内で薬物がすぐに分解されてしまうため、服用した薬が健康の問題を治療するのに十分な薬効を示さない可能性があります。「飲み合わせに注意」が必要なのは、これらの相互作用が起こるためです。

薬を服用しながらCBDを試したい場合は?

既に別の薬を服用しており、新しい追加の療法としてCBDを試してみたい場合は、まず医師に相談しましょう。あなたの主治医がCBDについて知見がある場合、あなたの薬において安全なCBD製品、投与量をアドバイスしてくれるかもしれません。

重要なことのひとつは、医師がそうすることが安全であると言わない限り、CBDを試すために現在の薬の服用を止めるべきでないことです。

現在服用している薬との相互作用が気になる場合は、ローション、クリーム、軟膏などの局所的なCBDも選択肢になります。これらは通常、血流に入ることがないため、他のCBD製品よりも相互作用の可能性が低くなります。

CBDと相互作用する薬はどれ?

「グレープフルーツと薬の飲み合わせ」の注意喚起を受けたことはありますか?グレープフルーツは、CBDが阻害するのと同じ酵素の働きを阻害します。そのため、「グレープフルーツ(またはそのジュース)」との飲み合わせに注意、との記載がある場合、CBDとの併用も避けるようにしてください。

米国の食品薬品局によると、現在患者さんに処方される薬品のうち、85種類以上の場合でグレープフルーツやオレンジなどの柑橘系ジュースと相互作用する可能性があるそうです。

これは、「フラノクマリン」と呼ばれるグレープフルーツ中の成分が、CBDと同様のメカニズムでCYP3A4酵素を阻害するためです。結果的に薬物の代謝が遅くなり、同時に服用した薬品から必要以上の薬効を引き出してしまう危険性があります。

グレープフルーツの警告がある薬一覧(一部分)

  • 抗生物質と抗菌薬
  • 抗がん剤
  • 抗ヒスタミン薬
  • 抗てんかん薬(AED)
  • 血圧薬
  • 血液希釈剤
  • コレステロール薬
  • コルチコステロイド
  • 勃起不全薬
  • 胃腸薬や吐き気の治療などの胃腸薬
  • 心調律薬
  • 免疫抑制剤
  • 不安、うつ病、気分障害の治療などの気分薬
  • 鎮痛剤
  • 前立腺薬

CBDと薬の相互作用の今後の研究

研究者は、CBDとさまざまな薬との間の特定の相互作用を明らかにするため研究に取り組んでいます。一部の薬では既に動物での研究が行われていますが、人間において実際にどのような影響があるかを決定づける必要があります。

既にいくつかの小規模な臨床試験も実施されています。例えば、治療が困難なてんかんを持つ25人の子供を対象としたこの研究では、13人の子供に「クロバザム」と「CBD」の両方が投与されました。研究者は、投与した子供のクロバザムのレベルが通常より上昇していることを認めました。彼らはCBDとクロバザムを一緒に摂取することは安全だと考察していますが、薬の濃度を監視することを推奨しています。

別の研究では、現在の抗てんかん薬である「AED」を服用している成人39人と小児42人にも別の形でCBDが投与されました。被験者のAEDの血清レベルをモニタリングしたところ、血清中のほとんどの成分で濃度が許容値でしたが、「クロバザム」と「デスメチルクロバザム」の2つの薬物では、血清レベルが通常の範囲外となりました。

このように現在一部の薬品についてはCBDとの相互作用があきらかになりつつあるものの、全ての薬におけるCBD相互作用の重症度を判断し、CBDと一緒に摂取するためのガイドを発表するには、さらなる研究が必要になりそうです。