近年では、大国カナダでの大麻合法化、アメリカの各州でも大麻解禁のムーブメントが起こるなど、大麻業界は話題に事欠きません。

この記事では、大麻に関して議論する上で必ず知っておきたい、産業用大麻・医療用大麻・嗜好用大麻の違いについて紹介していきます。

大麻とは

大麻(アサ)は、中央アジア原産とされる「アサ科アサ属」の一年草で、大麻草とも呼ばれます。学名は「カンナビス・サティバ」。

高くまっすぐ育ち、栽培がしやすく、日本でも戦前までは多くの農家で栽培されていました。

それだけでなく、人が栽培してきた最も古い植物のひとつとして、1万年を超えるつきあいがあります。

大麻3つの使用用途

一口に「大麻」と言っても、使用用途によって規制対象になるかどうかが異なります。大麻には、大まかに分けて3つの用いられ方があります。

それが、「産業用」「医療用」「嗜好用」です。

1,産業用大麻

麻紐
産業に使われる麻「麻紐」

産業用大麻の代表的な例は、麻素材の服や紐、紙など、麻の繊維を活用したものです。あなたが麻のTシャツや浴衣を着ていても逮捕されないように、産業用大麻はもちろん合法です。

これは、麻のどの部分が規制対象なのかによるものですが、一般的に麻の「成熟した茎」や「種子」は合法です。

ヘンプシード(麻の種子)は国内でも違法ではない
ヘンプシード(麻の種子)は国内でも違法ではない

茎の繊維は衣服などに使われ、種子は「ヘンプシード」として健康食品に活用されている他、「ヘンプシードオイル」として日本でも販売されています。大麻の種子は七味唐辛子の中に入っていることで有名です。

逆に、花冠(花の穂の部分)や葉、根は違法として取り締まられています。この部分(穂、葉、根)に含まれる主要な成分が「THC(テトラヒドロカンナビノール)」です。

花冠には違法成分であるTHCが多く含まれる
花冠には違法成分であるTHCが多く含まれる

茎や種子には「CBD(カンナビジオール)」という成分が含まれており、CBDは健康に対して様々なメリットがあると言われていますが、違法性はありません。

麻から抽出したCBDはオイルとして国内でも販売されている
種子から抽出したCBDは、オイルとして国内でも販売されている

CBDを多く含んだ茎や種子の部分は、CBDオイルなどとして「睡眠改善」「抗ストレス」「てんかんなどの精神疾患の改善」などに活用されています。

対象的に、THCには精神作用があるため、多くの地域(日本を含む)で 違法成分として取り締まりの対象になっています。

2,医療用大麻

違法性があると紹介したTHC(テトラヒドロカンナビノール)ですが、これを医療に活用しようとするのが、医療用大麻です。

例えば、がん治療を行っている患者にCBDと一緒にTHCが投与されることがあります。抗がん剤治療では大きな副作用(疼痛や嘔吐感、食欲の減衰など)が現れますが、THCの陶酔作用によってその痛みが軽減され、食欲の増進などにも役立ちます。

大塚製薬とGWファーマシューティカルズ カンナビノイド系がん疼痛治療剤「サティベックス(Sativex®)
大塚製薬とGWファーマシューティカルズ カンナビノイド系がん疼痛治療剤「サティベックス(Sativex®

その他にも、麻にはうつ病の緩和、緑内障による失明を防止、てんかんの発作を治療、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などを解消するなど、様々な効果が明らかになっています。

3,嗜好用大麻

大麻は葉巻(ジョイント)にして摂取されることも多い
大麻は葉巻(ジョイント)にして摂取されることも多い

THCを多く含んでいる品種の大麻を、嗜好品として摂取するのが嗜好用大麻です。一般的には、水煙管(水タバコ)や葉巻(ジョイント)、ワックスなどとして摂取されます。

THCの精神作用について、多くの人が、分かりやすく「ハイになる」という表現をしますが実は一様にそうではなく、あまり変化が無い人や、感覚が敏感になる人、むしろリラックスやダウンの方向に変化する人もいるそうです。

近年では品種改良によってTHC含有量が高いアサの品種が作られるようになりました。嗜好用大麻のことを指す場合、「マリファナ」と呼ぶ場合が多いです。

大麻の呼び方いろいろ

ヘンプ(Hemp)…いわゆる産業用大麻。THCの含有量が0.2〜1%未満の品種を指すことが多い。

マリファナ(Marijuana)…いわゆる嗜好用大麻。花冠、葉を乾燥または樹脂化、液体化させたものを指すことが多い。

カンナビス(Cannabis)…植物としての麻(あさ)。麻の学名が「Cannabis」である。

大麻…「麻」には、大麻,苧麻,亜麻,黄麻など様々な種類がある。麻の中の一種である「アサ」を麻と区別するために、別称として「大麻」と呼ばれている。つまり、麻の一種がアサであり、アサ=大麻である。

サティバ(Sativa)とインディカ(Indica)…大麻には大きく分けてサティバ種とインディカ種、そして両者の性質を併せ持つハイブリッド種が存在する。大麻の別称として「サティバ」と呼ばれることもある。