医療大麻の話をすると良く出てくる疑問が、普通の大麻と医療大麻は何が違うの?」という問いです。確かに、どちらとも「大麻」であることに変わりはありませんが、その使用目的成分に違いがあります。

例えば、いちごが飾られたクリスマスケーキと、あなたが金曜の夜にご褒美で食べるショートケーキを想像してみて下さい。どちらも同じショートケーキですが、買った目的が異なりますよね。そして、ご褒美に食べるケーキは、より甘い生クリームが使われていると仮定してみます。ここでいう、「ご褒美のための甘いケーキ」が、大麻でいうところの「嗜好用大麻」に当たります。

1,嗜好用大麻とTHC

日本において大麻は、アヘンやコカインなどと同じように、植物由来の薬物として規制されています。大麻には精神作用をもたらす成分が含まれており、高揚感、多幸感、リラックスなど、使用者によってばらつきはありますが、これらの精神作用を表す場合があります。

精神作用の源はTHCという成分

この精神作用の源となる成分が、大麻の中に含まれているTHC(テトラヒドロカンナビノール)という成分です。かつて、自生していた大麻に含まれるTHCの割合は、地域や品種によって差はあるものの、平均して5%程度だったと言われています。

大麻の栽培者たちは、より精神作用を高めるため、THC含有率の高い株を選び、品種改良を続け、含有率を25パーセントに引き上げ、さらには30パーセント程度にまで高めることに成功しています。THC濃度が高く、精神作用が大きい大麻は、高値で売れるからです。

THCが少なく無価値だった品種が陽の目を浴びる

長年価値が無いとされてきた「THCの含有量が少ない品種」ですが、個々最近大きな注目を集めるようになりました。THCが少ない品種にも多く含まれている「CBD(カンナビジオール)」という成分が、癲癇(てんかん)などの難病を含む、さまざまな症状の緩和に効果があることが分かってきたのです。そうして、大麻は医療の現場で応用されるようになってききました。これが、医療大麻です。

2.世界に広まる医療大麻

このような経緯で、”大麻には多くの医療効果が秘められている“として、「もっと医療に大麻を利用するべきではないか?」という議論が世界中で巻き起こっています。実際に、医療用途に限っては大麻の使用を「合法」とする国や地域も増えてきました。

既に多くの国で医療大麻は合法

2020年現在、医療大麻を「合法」と認めている国は、既に多く存在します。アメリカの全50州中、首都ワシントンDCと29の州で使用が認められているほか、カナダ・オランダ・ドイツなどの西洋諸国でも、「医療目的での大麻の使用」が認められています。

意外かもしれませんが、医療大麻の先進国としてまず挙げられるのがイスラエルです。いち早く大麻の効果を医療に取り入れてきたイスラエルでは、大麻の活用に寛容的であり、医療現場で実際に多くの大麻が自然的な治療法として選択されてきています。

日本でも医療大麻は大丈夫?

現状の日本では、たとえ医療目的であっても、大麻の栽培・所持・使用は厳しく取締られています。

日本国内でも大麻の医療への活用を訴える議論も一部ありますが、少なくともしばらくの間、状況が動くことは無いでしょう。戦後の日本に敷かれた厳しい大麻規制や日本の医療関係者の利権などが複雑に絡み合っていると考えられ、この状況を変えるにはかなり時間を要する可能性があります。

3.嗜好用大麻も解禁の流れが…

日本では「医療目的の大麻」も違法ですが、世界の一部の国々では「嗜好用」の大麻までも、合法化への風潮が始まってきています。

2018年、大国カナダで大麻が解禁

2018年、カナダで大麻の携帯・使用が合法化されました。嗜好用の大麻を国家として解禁するのは、南米ウルグアイに続き2カ国目ですが、先進国の一つとして数えられるカナダで嗜好用大麻が解禁されたニュースは、世界の議論の流れを一変させるのに十分な影響がありました。

アメリカでも10つの州と首都で合法

アメリカは「合衆国全体」としての立場では大麻を禁止しているものの、州によっては嗜好用大麻が合法になっています。西海岸を中心に10の州、さらに首都ワシントンDCでも嗜好用大麻が解禁されました。他の州でも大麻解禁の議論は大きくなっており、今後も大麻合法化への流れは加速していくとみられています。

その他多くの国でも”実質”合法化

国家として完全に「合法」と明記している国はまだ少ないですが、既に多くの国で大麻の所持・使用が「非犯罪化」されています。法律では「大麻は禁止」としながらも少量の個人使用を認めている国もあります。詳しい国名などは以下の記事で紹介しています。

まとめ

つらつらと書いてきましたが、もう一度、混同しやすい「医療大麻嗜好用大麻」の違いをまとめてみます。

医療用大麻・・・医療目的に使われる大麻の総称。一般的に、THC含有率が低くCBDの含有率が高い品種が用いられる。てんかんなどの治療に効果があり、人道的理由から多くの国と地域で合法化が進んでいる。日本では医療用だとしても大麻は違法。

嗜好用大麻・・・快楽を得るために使われる大麻の総称。精神作用を持つTHCが多く含まれる品種が好まれる。精神作用を持つため一部の国を除いて違法だが、犯罪組織への資金流入や経済的理由から、合法化や非犯罪化をしている国も増えてきている。

カナダの大麻解禁やアメリカでのCBDブームなど、今後日本でも見聞きすることが増えるであろうこれらのキーワードを抑えておくことは、あなたの生活を豊かにする手助けとなるかもしれません。